ホントに冬暖かく、夏涼しい家ですか!?注文住宅4つの基本的な性能を解説
注文住宅での家作りにおいて、『後悔をしない』ために大切なことは、一定以上の住宅の性能を確保することだと考えています。
断熱性能の例をあげると、一定以上を超える性能を確保することで、室温が安定し暮らしやすい環境を維持できます。
それだけではなく、性能の高い家は初期費用は比較的大きくなるものの、冷暖房の使用頻度が減り、イニシャルコストは低くくなり、トータルで安価な買い物となるケースもあるでしょう。
また、温度差がない家のなかで暮らすことでの健康面への良い影響も大きなメリットではないでしょうか。(なかなかお金換算することは難しいですが)
一方で、どういった性能に気を付けて家づくりを進めていけばよいのか、方向性が定まらないまま家づくりを進めてしまい、完成後に下記のような後悔をしては取返しがつきません。
『夏涼しく、冬暖かい家ができると聞いていたのにあまり実感ができない。』
『冷暖房の費用が以前住んでいた家と変わらない』
・夏涼しく、冬暖かい家⇒なぜ暖かい家、涼しい家といえるのか?
・地震に強く安全な家⇒地震に強い家はどういう検討をして判断をしたのか?
住宅会社の売り文句だけではなく、根拠となる数字を意識して賢い選択をしていく必要があります。
今回の記事では基本的な内容ですが、住宅の性能について網羅的に解説していますので、
住宅会社を選ぶ際に、
- どんな性能を家づくりをしているのか?
- 標準的な仕様はどういった性能なのか?
こういったことを根拠となる数字を意識して選んでいくことができるようになります。
また、基礎知識を習得することでより有意義な質問を住宅会社の担当者や設計者へすることができるようになり、納得のいく検討をすすめることができるようになります。
基本的な住宅の性能は後からリフォームで付け加えるということがとても難しいです。そのため、新築の段階で高い住宅性能をもった家を建てることが必要です。
例えば、断熱性能をUPしたいと検討した場合、断熱材を追加でいれようとしても、壁、床、天井をすべての部屋ではがして入れていく必要がありますが、とても大きなコストが掛かってしまいます。
また、燃料価格の高騰などを背景に住宅性能への注目があつまっており、どんどん技術的な進歩がある昨今、財産としても価値のある家を作っていくため、時代遅れにならないよう一歩進んだ住宅性能を持たせることも重要であると考えています。
家の基本性能をUPさせるのはとても大変!
あとからリフォームということは現実的ではないと思うよ
あとから変更できないところでもあるから慎重に選びたいね!
求める性能を家を建てることができる住宅会社からしっかり選ばないと
住宅性能とは何か?
住宅性能とは、省エネ性、快適性、健康性、安全性など、住宅が持つ性能のことを指します。
これらの性能が高い住宅は、住み心地がよく、住人の健康にも良い影響を与えます。また、低コストで快適な住宅を実現するためにも、住宅性能の向上は欠かせません。
住宅性能の重要性とは?
以下の4つの項目から住宅性能について解説していきます。
- 省エネ性能
- 健康性能
- 耐震性能
- 耐久性、メンテナンス性
省エネ性能
高断熱・高気密の住宅は、冬暖かく、夏涼しく、エネルギー消費量も少なくなります。
また、太陽光発電や蓄電池の導入により、自家発電による電力の利用が可能になり、光熱費の削減にもつながります。
加えて、省エネ性能の向上は、住宅を快適に保ちながら、地球環境にも貢献することができます。
高断熱・高気密の住宅の特徴
高い断熱性能
高断熱・高気密の住宅は、外気温と室内温度の差を縮め、室内温度を保つための断熱性能が非常に高くなっています。断熱材の選定や壁・床・天井などの構造にも配慮されています。
高い気密性能
高断熱・高気密の住宅は、室内と屋外の空気の流れを防ぐために、高い気密性能を持っています。窓やドア、換気扇などの気密性を保ち易い部材を選択して空気の漏れを最小限に抑えています。
気密性能を高めることで、空調で快適な温度にした空気の漏れを防ぐことができます。
省エネ性能の向上
高断熱・高気密の住宅は、冬場には暖房の消費量が抑えられ、夏場には冷房の消費量が抑えられるため、エネルギー効率が非常に高いです。
また、屋根に太陽光パネルを設置することで、自然エネルギーを利用し、さらに冷暖房費の支出を抑えることができます。
快適な室内環境
高断熱・高気密の住宅は、室内の温度や湿度を一定に保つため、快適な室内環境を提供します。また、外部からの騒音やほこりの侵入を抑えるため、室内空気の品質も高くなります。
長期間にわたる住み心地の保持
高断熱・高気密の住宅は、耐久性が高くなっています。
高い断熱性能、気密性能を有しているため、人間が暮らし易い環境を作るだけではなく、カビや結露が発生しにくい湿度に室内を保つことができるため、結果として耐久性が高くなり、長期間にわたって住み心地を保つことができます。
そのため、将来的な住宅の価値も高いとされています。
デメリットも….
高断熱・高気密の良い面ばかり紹介してきましたが、大きなデメリットとしては、建築時のコストが高いことがあげられます。
初期費用はお高め
断熱性能
断熱性能の向上に関して、日本では国土交通省が定めた「省エネルギー基準」があります。この基準では、住宅の断熱性能を示す「Ua値」という指標が用いられます。
Ua値は、住宅全体の熱損失係数を示す数値で、低いほど断熱性能が高いことを示します。国土交通省が定める省エネルギー基準において、Ua値の基準値は、地域別に設定されています。平成28年度「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(国土交通省HPへのリンク)
また、建築基準法においても、住宅の断熱性能に関する規定があります。「平成28年省エネルギー基準に基づく住宅の設計等に関する技術上の基準の整備に関する省令」において、断熱材の厚さや種類、断熱材の施工方法などに関する詳細な規定が定められています。
以上が、日本において住宅の断熱性能に関する基準や規定の一例です。これらの基準や規定に沿って、住宅の断熱性能を向上させることが大切です。
日射取得について
日射取得についても断熱性能と同じくらい重要な要素であると考えることができます。
住宅において、太陽光線によって室内が暖かくなり、それによって冬季の暖房需要を減らすことができます。このような太陽光線の利用を「日射利用」と呼び、住宅の設計においても重要な要素の一つとなっています。
日射利用によって、暖房需要を減らすことができる反面、夏季には室内が過剰に暑くなるといった問題も発生することがあります。
そのため、日射利用を最大限に活用しながら、夏季の過熱を防ぐためには、適切な日射遮蔽の導入が必要です。
断熱性能と同様に、日射利用についても国土交通省が定める省エネルギー基準において、基準値が設定されています。また、日射利用の計画や設計に関しては、建築士やエネルギー管理士といった専門家のアドバイスを受けることが大切です。
断熱性能と日射利用の両方を最適化することで、住宅の省エネ性能を高め、快適な住環境を実現することができます。
日射取得については、土地や周辺環境の影響が大きく影響してくるため、土地探しの段階から検討しておきましょう。
太陽光発電や蓄電池の導入とメリット
太陽光発電システムは、太陽光を利用して電気を発電するシステムです。蓄電池は、発電した電気を貯めるためのバッテリーです。このシステムを住宅に導入することには以下のようなメリットがあります。
以下の動画で太陽光発電導入の金銭的な話について、とても詳しく『たくさんの数字の根拠をそえて』解説されています。
数字の根拠が明確で太陽光発電をどうしようかな?と悩んでいる方のとても参考となります。
なお、家づくりにあたっては、松尾先生の著書『ホントは安いエコハウス』こちらも参考に勉強させていただきました。
節電効果
太陽光発電システムは、太陽光を利用して発電するため、電気代を節約することができます。また、蓄電池を併用することで、発電した電気を貯めて使用することができるため、より多くの節電効果が期待できます。
環境にやさしい
太陽光発電システムは、化石燃料を使用しないため、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しません。そのため、地球温暖化防止につながります。
災害時に備えることができる
蓄電池を併用することで、停電時にも電気を利用することができます。また、災害時には太陽光発電システムが発電するため、電力供給が途絶えることがありません。
以上のように、太陽光発電システムと蓄電池の導入には多くのメリットがあります。ただし、導入には初期費用がかかるため、長期的に見た場合の利益を考えて導入することが重要です。また、設置場所や設置面積、発電量などによって、導入の際には注意点があります。
健康性能
建材・素材の選び方や換気システムの選び方など、住宅の健康性能を向上させるポイントは多岐にわたります。
住宅内の換気システムは、空気の入れ替えや湿気の除去に役立ち、換気不足による健康被害を防ぐことができます。また、化学物質の含まれない自然素材を使用することも、健康性能を高めるための一つの方法です。
建材・素材の選び方と注意点
天然素材を選ぶ
天然素材は、化学物質を含まず、呼吸や血行を促進する効果があります。また、調湿作用があるため、湿気やカビの発生を防止できます。例えば、漆喰や無垢材などが良い素材とされています。
健康の面だけではなく自然素材の風合いは唯一無二のものであり、傷や日焼けなども単なる劣化でなく『味』にもなりえる点も大きなメリットといえます。
我が家の場合は、自然素材を多めに取り入れたい。という家のテーマであったため、無垢床を採用しました。
湿度によって伸び縮みしたりメンテナンスは負担がかかるようですが、唯一無二の風合いです!
ヒートショックの減少
断熱性能の向上により、住宅内の温度変化が少なくなり、ヒートショックを防ぐことができます。
具体的には、外気温が低い状態で暖房を使用しているときに、急激な室温変化が起こることをヒートショックといいます。このようなヒートショックは、体調不良や健康リスクを引き起こすことがあります。
関係する統計資料としては、国立環境研究所が実施した「住宅居住環境・健康関連調査」において、住宅の断熱性能が高いほど、居住者の健康への影響が低くなることが報告されています。
具体的には、断熱性能が高い住宅では、風邪の発症率が低く、肺炎などの呼吸器系疾患のリスクも低いという結果が出ています。
また、日本住宅保証検査機構が実施した「住宅保証制度施工実績調査報告書」によれば、断熱性能が高い住宅では、室内の温度変化が少ないため、家族の健康に影響を及ぼすリスクが低くなることが報告されています。
これらの統計資料からも、断熱性能の向上は、ヒートショックのリスクを低減し、住宅内の健康リスクを減少させることができることが示唆されています。
耐震性能
住宅の安全性能は、家族の安全を守るために欠かせません。防犯対策や耐震性能の向上は、その一例です。特に、地震による被害を減らすためには、耐震性能の高い住宅が必要不可欠です。
住宅の耐震性能は、地震による被害を最小限に抑えるために重要な要素です。耐震性能は建物の基礎、壁、柱、屋根などの構造体の設計や施工方法、材料選定などによって決まります。
一般的には、耐震性能は建築基準法に基づいて評価されます。建築基準法では、建物の規模、用途、地域などに応じて最低限の耐震性能が定められており、建築基準法に適合する建物は、一定の耐震性能を有していることになります。
耐震性能を向上させるためには、以下の点に注意する必要があります。
設計・施工
建築基準法に適合する耐震設計をすることが必要です。また、建物の構造体を施工する際には、施工業者が技術や知識を持っていることを確認することも大切です。
地盤調査
建物を建てる前に、地盤の状態を調査することが必要です。地盤が弱い場合には、地震による揺れが大きくなるため、適切な対策が必要です。
建物そのものの耐震性能も十分なものとしたいですが、家を建てる足もとからしっかりかためるため、地盤の良い土地を土地さがしの段階からしっかりと検討しましょう。
部材の選定
構造体の部材は、強度や剛性が必要な場所には、適切な材料を選定する必要があります。
耐震等級について
国が定める耐震等級とは、住宅などの建築物の耐震性能を示す指標の一つです。建築基準法に基づき、地震の被害を最小限に抑えるために、耐震等級が設定されています。
耐震等級は、1から3までの数字で表され、耐震性能が高い順に3、2、1となっています。1は耐震性能が最も低く、3は最も高いです。耐震等級3を取得するためには、耐震基準に従った耐震設計や施工が必要です。
木造住宅の耐震等級の計算方法について
木造住宅の耐震等級の計算方法には、壁量計算、性能表示計算及び許容応力度計算の3つの方法があります。
これらの方法を比較すると、壁量計算は建物の具体的な構造要素に基づいて評価するため、建物の耐震性能を詳細に分析できます。
性能表示計算は目標の性能目標値に基づいて評価するため、設計段階での目標を明確にすることができます。
許容応力度計算は材料の強度や応力を考慮して耐震性能を評価するため、実際の応力状態を反映させることができます。
壁量計算とは?
壁量計算は、木造住宅の耐震性を評価する計算方法の1つです。この方法では、壁の材料、寸法、間隔、コーナーの形状などを考慮し、壁の耐力を算出します。
具体的には、木造住宅の壁は柱や梁によって支持されており、壁の耐力はその支持材の剛性や断面積、長さなどによって決まります。壁量計算では、このような支持材の条件を考慮し、壁の耐力を評価します。
壁量計算においては、壁にかかる力(荷重)を想定し、それに対する壁の耐力を計算します。荷重としては、建物の重み、地震の力、風圧、積雪荷重などが考えられます。そして、壁の耐力を割り出すために、支持材の断面積や長さ、または接合部分の強度などを計算します。
壁量計算のメリットは、単純でわかりやすく、建物の全体的な構造や強度を評価できることです。一方、詳細な計算が必要であり、設計には専門的な知識や技術が必要です。また、材料や構造によっては壁量計算では評価できない場合もあります。
性能表示計算とは?
性能表示計算は、建物の耐震性能を目標の性能目標値に基づいて評価する方法です。
一般的には、建物が特定の地震動に対してどの程度の応答を示すかを評価します。性能目標値は建築基準法や地域の建築基準によって規定されており、耐震性能のランクや地震動の影響を考慮した評価が行われます。
許容応力度計算とは?
許容応力度計算は、耐震壁の必要数を許容応力度に基づいて求める方法です。この方法では、建物の重さ、地震の加速度、耐震壁の厚さ、幅、高さ、材質、補強方法などを考慮して、壁の耐震性能を評価します。
許容応力度計算では、まず、耐震性能を表す「許容応力度」という指標を用います。許容応力度は、壁の断面積や材質、強度などを考慮して求められる値で、単位は「N/mm2」です。
建築基準法において、耐震性能を表す指標として許容応力度が規定されており、建物の使用目的や高さ、地震動のレベルなどに応じて、耐震等級に対応する許容応力度が定められています。
次に、耐震壁の必要数を求めます。耐震壁の必要数は、建物の重量や地震動の加速度などから求められる「耐力」に対して、壁の「耐力」を比較して求めます。耐力は、壁の断面積と許容応力度から求められる値で、壁の数と厚さを変えて試算し、必要な厚さと数を算出します。
許容応力度計算では、壁の設置場所や形状、補強方法、周囲の柱や梁などの影響を考慮した評価が必要です。また、計算には建築構造物耐震性能評価基準(GB50122-2014)などの建築基準法に基づく指針があります。
住宅の耐久性、メンテナンス性
耐久性
建物の構造体(柱や梁など)や外壁、屋根などの素材が強く、耐震性に優れていることが大切です。
経年劣化による腐食や腐朽、劣化に注意し、適切な定期的なメンテナンスを行うことが必要です。
適切な換気・断熱、湿気対策などを行い、内部環境を保つことも耐久性に影響します。
メンテナンス性
外壁や屋根、樋などの素材や加工方法、設計などによって、メンテナンスがしやすいかどうかが異なります。
定期的な点検や清掃、修繕を行い、経年劣化による劣化を予防することが重要です。
耐久性に優れた素材やシステムを採用し、長期間にわたってメンテナンスがしやすく、コストを抑えることも大切です。
今後は高い性能の住宅が当たり前になる!?
私は今後は性能の高いといわれている家が一般的になると考えています。
まだ少し時間はかかるかと思いますが、
・エネルギー価格の高騰→省エネへの関心の高まり
・新型コロナウイルス感染症の蔓延の経験→お家時間を充実させることのメリットに気づく
これらの背景があり、よりよい家づくりをしたいという気運が高まっているように感じます。
また、今後は、高気密高断熱住宅のノウハウがどんどん一般化していき、かつ、新しい技術開発なども進み、高性能な家というものがなくなり、『高性能ではなく最低限』の性能といわれるようになるのではないでしょう。
そうなったときに、『時代遅れだ』となってしまってはとても悲しいですね。
仮に家を資産だととらえたときに、初期投資だけではなく、未来の価値も推測していくのがより良い家づくりにつながるのではないでしょうか。
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